アンティーク（推定19世紀後半）　切り抜きカメオ ”バッカンテ”

カテゴリアクセサリー、時計レディースアクセサリーブローチカメオ状態傷や汚れあり（詳細）縦：約45mm横：約30mm作者：－（アンティーク）QR：アーティスティッククオリティ
当ギャラリーでは珍しい、切り抜き型カメオの入荷です。
カメオの形状の中でも特殊といえる切り抜きカメオ。個人的にはこのような切り抜き型で作られたシェルカメオの評価は低く、買い付けるのは稀なことです。評価が低い理由は、そもそもコルネリアンシェルやサルドニクスシェルをカメオに用いる最大の理由は色の層がきれいに分かれていてメノウの代用として優れているからで、ゆえにシェルカメオはその色差を用い上手に表現してこそ意義があるのであって白色層のみを切り抜くことは根本的にナンセンスといえるから。さらに色差を使わないのならば厚みに優れるコンク、ラーヴァ、トルコ石、珊瑚など他にもっと良い素材がたくさんあるわけで、コルネリアンやサルドニクスを素材に選んでおいて切り抜きカメオとすることはただただ優位点を捨てただけのベストを尽くさなかったカメオといえ、それこそが何よりも美しくないと考えているのです。
ただし、この完成した時点ですでに半端物ゆえに評価が低いというのは、それとして作られた場合の話。アンティークカメオのなかには、通常のカメオとして作られたものの長い年月の中で破損してしまい、割れた部分を整えたり、それでも整えきれない割れ方をしたもので像を切り抜いたものがあるのです。この場合カメオとしては完全なものより落ちるというのはその通りである一方、ベストを尽くさなかった作品ではなく、むしろ破損してなお大切にしようとした結果なので逆にベストを尽くした結果生まれた切り抜きカメオといえます。こうなれば話は別で、そういう良い作品や思い入れのある作品を大切にしようとする人の思いを美しくないとは思いません。今回はもちろんアンティークのそれということで買い付けに至った作品です。モチーフは人気のバッカンテで、サイズからするともともとは2インチ×1.5インチのスタンダードなサイズだった様子。バッカンテの見どころとなるぶどうは葉が薄く表現され、実も一粒一粒掘り出されており上質、また肌の彫り筋を消すよう丁寧に研磨されているのもうかがえます。彫りもよく造形の美しさも見事なところをみるに、元は良いフレームに収まった美しいブローチだったのでしょう。また、切り抜き方もとても丁寧で大切にされてきたのがよくよくわかり、ここもベストを尽くした点として好意的に評価しております。
貝はコーヒー色の地にくっきりした白色層の乗ったサルドニクス。とはいえ今回は切り抜きカメオなので、そのコントラストは意味を成しませんが…。いまはその出自のよさを伝えるばかりです。状態に関しましては、裏面7時位置にチップ及び剥離、白色層ではバッカンテの首元付近に2筋のごく薄いヘアラインが見受けられます。今回は特殊な状態のカメオとしてもちろん完全な形で現存するものよりは評価を落としており、価格は完全な形だった場合の想定からおおよそ半額ほどで決めております。